東京地方裁判所 昭和59年(特わ)376号・昭59年(特わ)1802号・昭59年(特わ)2621号・昭59年(特わ)3359号・昭59年(特わ)3613号 判決
右の者らに対する法人税法違反各被告事件について、当裁判所は、検察官上田廣一出席のうえ審理を遂げ、次のとおり判決する。
主文
一 被告人善本産業株式会社を罰金四八〇〇万円に、被告人日環アルミニウム工業株式会社を罰金二四〇〇万円に、被告人栄進商事株式会社を罰金一四〇〇万円に、被告人株式会社エクステリア日環を罰金三〇〇〇万円に、被告人日環住機設備株式会社を罰金一四〇〇万円に、被告人株式会社日環を罰金四一〇〇万円に、被告人日環アルミ建材株式会社を罰金一〇〇〇万円に、被告人日環住機株式会社を罰金三九〇〇万円にそれぞれ処する。
二 被告人全炳城を懲役二年六月及び罰金一億三〇〇〇万円に、被告人山口敦男を懲役一年に、被告人猪口勝己、被告人全仁孝、被告人李金永を各懲役八月にそれぞれ処する。
三 未決匂留日数中、被告人全炳城に対し四〇日を、被告人山口敦男に対し一〇日を、それぞれ右各懲役刑に算入する。
四 被告人全炳城において、右罰金を完納することができないときは、金二五万円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。
五 被告人猪口勝己、被告人全仁孝、被告人李金永に対し、この裁判確定の日からいずれも二年間、右各刑の執行を猶予する。
理由
第一犯行に至る経緯等
被告人善本信一こと全炳城(以下「被告人炳城」という。)は、昭和五〇年七月、それまで日本環境センターの名称で行っていた消火器の訪問販売業を法人化した被告人株式会社日環(以下「被告会社日環」という。)を設立し代表取締役に就任したが、同社において昭和五一年ころからエクステリア製品の訪問販売を始めたところ、順調に業績が伸びたため、新たに販売施行会社として、昭和五三年二月被告会社日環の千葉営業所を独立させた被告人株式会社エクステリア日環(以下「被告会社エクステリア日環」という。)、同年一〇月被告会社日環の新宿営業所を独立させた被告人日環住機株式会社(以下「被告会社日環住機」という。)を設立し、代表取締役に被告人猪口勝己(以下「被告人猪口」という。)、同星山こと李金永(以下「被告人李」という。)をそれぞれ就任させ、更に昭和五四年二月には、機材の卸会社として被告人善本産業株式会社(以下「被告会社善本産業」という。)を設立し、自ら代表取締役に就任した。
ところで、被告人炳城は、右各被告会社につき経営が悪化した場合に備えかつ将来事業の拡大を図るための資金を蓄積する目的で、現金売上の一部を除外するなどして脱税を図っていたが、昭和五四年春ころ、売上高が急速に伸び多額の利益が上るようになったうえ、右のように現金売上の除外によって脱税を行えば従業員に不正の事実がわかってしまい、不都合であったこと等から、顧問税理士の被告人山口敦男(以下「被告人山口」という。)に適当な脱税方法がないかどうかを相談したところ、同被告人より、脱税が発覚して一方の系列の会社が摘発されても、他方の系列の会社に税務調査が及ばないようにしておくために、日環関係会社(以下「日環グループ」という。)の内に卸会社を二つ設立し、卸会社・販売施工会社を二系列とし、系列間の関係を断つこと、売上高が一〇億円を超えると、税務署の調査が厳しくなり脱税の事実が露見しやすいので、企業を分割すること等の教示を受けた。そこで被告人炳城は、昭和五五年六月、卸会社として、被告会社善本産業のほかに共同商事株式会社(以下「共同商事」という。なお共同商事は昭和五六年一〇月二三日解散し、同会社の営業は同五六年四月設立の株式会社装美-以下「装美」という-に引き継がれたが、装美もまた昭和五八年六月一日解散し、同会社の営業は、同五七年四月設立の被告人栄進商事株式会社-以下「被告会社栄進商事」という-に引き継がれた。)を設立するとともに、以下のとおり、従来の販売施工会社の営業所あるいは支社を分離、独立させて法人とした。すなわち、昭和五四年九月被告会社日環住機の横浜営業所を独立させて被告人日環住機設備株式会社(以下「被告会社日環住機設備」という。)を設立し、被告人善本孝こと全仁孝(以下「被告人仁孝」という。)を代表取締役に就任させ、また同五五年一二月一二日被告会社日環の九州の各営業所を独立させて被告人日環アルミ建材株式会社(以下「被告会社日環アルミ建材」という。)を、翌一三日同じく被告会社日環の新大阪支社、大阪東支社、広島支社、松山支社を独立させて被告人日環アルミニウム工業株式会社(以下「被告会社日環アルミニウム工業」という。)をそれぞれ設立し、いずれも自ら代表取締役に就任した。なお、被告人炳城は、右各会社のほか、昭和五四年七月日環グループ各社の経理を目的とする日本実業株式会社を設立し、またサニールームの販売施工会社として、昭和五四年九月一九日日環住宅設備株式会社、同月二五日日環産業株式会社、同五六年一一月日環住宅機器株式会社、同五七年一二月株式会社日環工業をそれぞれ設立し、更に昭和五八年四月にはソーラー器具の販売施工会社として日環クリエイト工業株式会社を設立しているが、前記被告人山口の提案に従い、日環グループを二系列に分け、被告会社日環、同エクステリア日環、同日環住機、同日環アルミニウム工業は、被告会社善本産業から機材を仕入れていたものであり、他方被告会社日環住機設備、日環住宅設備株式会社、日環産業株式会社、被告会社日環アルミ建材、日環住宅機器株式会社、株式会社日環工業は、共同商事、装美、被告会社栄進商事から機材を仕入れていたものである。
第二罪となるべき事実
被告会社善本産業は、東京都新宿区新宿二丁目三番一三号(昭和五七年七月四日以前は同豊島区東池袋三丁目一番一号、同五五年七月四日以前は同都新宿区歌舞伎町二丁目一七番七号、同年二月二七日以前は同区西新宿七丁目三番一〇号)に本店を置き、住宅設備機器の製造販売等を目的とする資本金一二〇〇万円(昭和五八年四月二二日以前は三〇〇万円)の株式会社であり、共同商事は、もと同都目黒区上目黒五丁目一七番一七号(昭和五五年六月二六日以前は、同区上目黒三丁目八番五-四〇五号)に本店を置き、住宅設備機器の製造ならびに販売等を目的とする資本金三〇〇万円の株式会社であったものであり、装美は、もと同都新宿区西早稲田三丁目三一番一一号ニューライフ西早稲田一一〇三号に本店を置き、住宅設備機器の製造並びに販売を目的とする資本金三〇〇万円の株式会社であったものであり、被告会社日環アルミニウム工業は、大阪市北区西天満三丁目六番三六号(昭和五九年八月五日以前は同区西天満六丁目七番二号)に本店を置き、住宅用金属製品の販売等を目的とする資本金三〇〇万円の株式会社であり、被告会社栄進商事は、東京都渋谷区恵比寿二丁目二七番一四号ヴィラ清水五〇二号室に本店を置き、住宅設備機器の製造、販売等を目的とする資本金五〇〇万円の株式会社であり、被告会社エクステリア日環は、同都豊島区東池袋三丁目一番一号(昭和五七年八月二二日以前は千葉市千葉町二番一三号)に本店を置き、住宅用金属製品の製造及び販売等を目的とする資本金一〇〇〇万円の株式会社であり、被告会社日環住機設備は、横浜市中区蓬来町一丁目一番三号に本店を置き、住宅用金属製品の販売等を目的とする資本金五〇〇万円の株式会社であり、被告会社日環は、福岡市中央区大名町二丁目八番一八号(昭和五九年八月二四日以前は、東京都渋谷区渋谷三丁目二六番二〇号三鱗渋谷ビル五階)に本店を置き、一般住宅用アルミニウム製建築資材の販売及び取付工事等を目的とする資本金一〇〇〇万円の株式会社であり、被告会社日環アルミ建材は、同都豊島区西池袋三丁目二五番一三号リバーストンビルデイング8F(昭和五七年一〇月二四日以前は、福岡市中央区大名町二丁目八番一八号)に本店を置き、ベランダ、テラス、カーポート等の住宅用アルミ製品の販売等を目的とする資本金三〇〇万円の株式会社であり、被告会社は日環住機は、東京都渋谷区代々木一丁目五九番一号に本店を置き、住宅用金属製品の製造及び販売等を目的とする資本金一〇〇〇万円の株式会社であり、
被告人炳城は、被告会社善本産業、共同商事、装美、被告会社日環アルミニウム工業、同日環、同日環アルミ建材については代表取締役として、被告会社栄進商事、同エクステリア日環、同日環住機設備、同日環住機については実質経営者として、それぞれ右各会社の業務全般を統括していたもの、被告人山口は、税理士として、被告会社善本産業、共同商事、装美、被告会社日環アルミニウム工業、同栄進商事の各税務書類の作成、税務申告等の業務に従事していたもの、被告人猪口は、被告会社エクステリア日環の代表取締役として同会社の業務全般を総括処理しているもの、被告人仁孝は、被告会社日環住機設備の代表取締役として同会社の業務全般を総括処理しているもの、被告人李は、被告会社日環住機の代表取締役として同会社の業務全般を総括処理しているものであるが、
一 被告人炳城、同山口は、共謀のうえ、
(一) 被告会社善本産業の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空仕入を計上するなどの方法により所得を秘匿したうえ、昭和五五年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における同被告会社の実際所得金額が四億九六〇八万一六八八円(別紙(一)修正損益計算書参照)あったにもかかわらず、同五六年二月二七日、東京都豊島区西池袋三丁目三三番二二号所在の所轄豊島税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が三八二七万四九九三円でこれに対する法人税額が一四四二万三五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(昭和五九年押第四七〇号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により同被告会社の右事業年度における正規の法人税額一億九七五四万六三〇〇円と右申告税額との差額一億八三一二万二八〇〇円(別紙(二)税額計算書参照)を免れ、
(二) 共同商事の業務に関し、法人税を免れようと企て、昭和五五年六月二三日から同五六年五月三一日までの事業年度における同会社の実際所得金額が四億三六四七万〇三五一円(別紙(三)修正損益計算書参照)あったにもかかわらず、同五六年七月二八日、同都目黒区中目黒五丁目二七番一六号所在の所轄目黒税務署において、同税務署長に対し、同会社は開業以来何らの事業も行っていないために、所得金額が零で納付すべき法人税額はない旨のことさら虚偽の法人税確定申告書(右同押号の2)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額一億八二三五万七四〇〇円(別紙(四)税額計算書参照)を免れ、
(三) 装美の業務に関し、
1 昭和五六年四月一七日から同五六年一一月三〇日までの事業年度における法人税の確定申告期限の経過後に至り、同会社の法人税を免れようと企て、同会社の実際所得金額が四億九一三六万一八七四円(別紙(五)の1修正損益計算書参照)あったにもかかわらず、所得金額の実際の合計残高試算表の利益額とは別に過少に算出した三〇五万四二六二円としこれに対する法人税額が九一万六二〇〇円である旨のことさら虚偽過少の法人税確定申告書(右同押号の3)を作成したうえ、同五七年三月二九日、同区北新宿一丁目一九番三号所在の所轄淀橋税務署において、同税務署長に対し、右申告書を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額二億〇五七三万一六〇〇円と右申告税額との差額二億〇四八一万五四〇〇円(別紙(六)の1税額計算書参照)を免れ、
2 昭和五六年一二月一日から同五七年一一月三〇日までの事業年度における同会社の法人税を免れようと企て、同会社の実際所得金額が四億五八四二万五五四八円(別紙(五)の2修正損益計算書参照)あったにもかかわらず、同五八年一月二七日、前記淀橋税務署において、同税務署長に対し、合計残高試算表上の売上金額を過少に計上し架空経費を計上することにより欠損金額が七四三万九三六五円で納付すべき法人税額はない旨のことさら虚偽過少の法人税確定申告書(右同押号の4)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額一億九一五七万八五〇〇円(別紙(六)の2税額計算書参照)を免れ、
(四) 被告会社日環アルミニウム工業の業務に対し、法人税を免れようと企て、架空給与を計上するなどの方法により所得を秘匿したうえ、
1 昭和五六年三月一日から同五七年二月二八日までの事業年度における同被告会社の実際所得金額が一億八四九七万〇五五八円(別紙(七)の1修正損益計算書参照)あったにもかかわらず、昭和五七年四月二八日、大阪市北区南扇町七番一三号所在の所轄北税務署において、同税務署長に対し、所得金額が二七六三万二七九四円でこれに対する法人税額が一〇五二万二一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(右同押号の8中の同被告会社にかかる昭和五七年二月期法人税確定申告書)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同被告会社の右事業年度における正規の法人税額七六六〇万四〇〇〇円と右申告税額との差額六六〇八万一九〇〇円(別紙(八)の1税額計算書参照)を免れ、
2 昭和五七年三月一日から同五八年二月二八日までの事業年度における同被告会社の実際所得金額が一億九六七三万〇六四一円(別紙(七)の2修正損益計算書参照)あったにもかかわらず、昭和五八年四月二八日、前記北税務書において、同税務署長に対し、所得金額が一億三七五五万四四三六円である旨の虚偽の法人税確定申告書(右同押号の8中の同被告会社にかかる昭和五八年二月期法人税確定申告書)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同被告会社の右事業年度における正規の法人税額七八六四万一七〇〇円と右申告税額との差額二四八三万三〇〇〇円(別紙(八)の2税額計算書参照)を免れ、
(五) 被告会社栄進商事の業務に関し、法人税を免れようと企て、期末商品たな卸を一部除外するなどの方法により所得を秘匿したうえ、昭和五七年四月二八日から同五八年三月三一日までの事業年度における同被告会社の実際所得金額が七億五六一二万五七三五円(別紙(九)修正損益計算書参照)あったにもかかわらず、昭和五八年五月二七日、東京都渋谷区宇田川町一番三号所在の所轄渋谷税務署において、同税務署長に対し、所得金額が六億三二八八万五三八七円でこれに対する法人税額が二億四四九五万二八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(右同押号の9)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同被告会社の右事業年度における正規の法人税額二億九六六九万七一〇〇円と右申告税額との差額五一七四万四三〇〇円(別紙(一〇)税額計算書参照)を免れ、
二 被告人炳城、同猪口は、共謀のうえ、被告会社エクステリア日環の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空の外注工賃を計上するなどの方法により所得を秘匿したうえ、
(一) 昭和五五年九月一日から同五六年八月三一日までの事業年度における同被告会社の実際所得金額が一億四五二四万一九一五円(別紙(一一)の1修正損益計算書参照)あったにもかかわらず、昭和五六年一〇月三〇日、千葉市新宿二丁目六番一号所在の所轄千葉東税務署において、同税務署長に対し、所得金額が六八一二万八一三六円でこれに対する法人税額が二七五一万二八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(右同押号の5)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同被告会社の右事業年度における正規の法人税額五九九〇万〇三〇〇円と右申告税額との差額三二三八万七五〇〇円(別紙(一二)の1税額計算書参照)を免れ、
(二) 昭和五六年九月一日から同五七年八月三一日までの事業年度における同被告会社の実際所得金額が二億六三四二万三七八四円(別紙(一一)の2修正損益計算書参照)あったにもかかわらず、昭和五七年一〇月二九日、前記豊島税務署において、同税務署長に対し、所得金額が六六七三万一四一八円でこれに対する法人税額が二六六九万五三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(右同押号の6)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同被告会社の右事業年度における正規の法人税額一億〇九三〇万六〇〇〇円と右申告税額との差額八二六一万〇七〇〇円(別紙(一二)の2税額計算書参照)を免れ、
三 被告人炳城、同仁孝は、共謀のうえ、被告会社日環住機設備の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空の材料仕入を計上するなどの方法により所得を秘匿したうえ、昭和五六年一月一日から同五六年一二月三一日までの事業年度における同被告会社の実際所得金額が一億九六二七万一六九四円(別紙(一三)修正損益計算書参照)あったにもかかわらず、昭和五七年二月二四日、横浜市中区山下町三七番地九号所在の所轄横浜中税務署において、同税務署長に対し、所得金額が七〇一一万〇四七〇円でこれに対する法人税額が二八〇六万六一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(右同押号の7)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同被告会社の右事業年度における法人税額八一〇五万三七〇〇円と右申告税額との差額五二九八万七六〇〇円(別紙(一四)税額計算書参照)を免れ、
四 被告人炳城は、
(一) 被告会社日環の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空給与を計上するなどの方法により所得を秘匿したうえ、
1 昭和五五年七月一日から同五六年六月三〇日までの事業年度における同被告会社の実際所得金額が二億三五二三万九五三七円(別紙(一五)の1修正損益計算書参照)あったにもかかわらず、昭和五六年八月三一日、前記渋谷税務署において、同税務署長に対し、所得金額が三八九一万九四四五円でこれに対する法人税額が一四九三万一九〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(昭和六〇年押第一号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同被告会社の右事業年度における正規の法人税額九七三八万六三〇〇円と右申告税額との差額八二四五万四四〇〇円(別紙(一六)の1税額計算書参照)を免れ、
2 昭和五六年七月一日から同五七年六月三〇日までの事業年度における同被告会社の実際所得金額が一億二五七〇万二五五〇円(別紙(一五)の2修正損益計算書参照)あったにもかかわらず、昭和五七年八月二八日、前記渋谷税務署において、同税務署長に対し、所得金額が二八六二万九一八五円でこれに対する法人税額が一〇三一万二七〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(右同押号の2)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同被告会社の右事業年度における正規の法人税額五一〇八万三四〇〇円と右申告税額との差額四〇七七万〇七〇〇円(別紙(一六)の2税額計算書参照)を免れ、
3 昭和五七年七月一日から同五八年六月三〇日までの事業年度における同被告会社の実際所得金額が六六二六万〇四五三円(別紙(一五)の3修正損益計算書参照)あったにもかかわらず、昭和五八年八月二五日、前記渋谷税務署において、同税務署長に対し、所得金額が七七二万二一二三円でこれに対する法人税額が一七八万六二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(右同押号の3)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同被告会社の右事業年度における正規の法人税額二六三三万八八〇〇円と右申告税額との差額二四五五万二六〇〇円(別紙(一六)の3税額計算書参照)を免れ、
(二) 被告会社日環アルミ建材の業務に関し、法人税を免れようと企て、架空給与を計上するなどの方法により所得を秘匿したうえ、昭和五六年五月一日から同五七年四月三〇日までの事業年度における同被告会社の実際所得金額が九六六九万七〇三三円(別紙(一七)修正損益計算書参照)あったにもかかわらず、昭和五七年六月三〇日、福岡市中央区天神四丁目八番二八号所在の所轄福岡税務署において、同税務署長に対し、所得金額が一五六五万六六一九円でこれに対する法人税額が五五四万五一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(右同押号の4)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同被告会社の右事業年度における正規の法人税額三九五八万二三〇〇円と右申告税額との差額三四〇三万七二〇〇円(別紙(一八)税額計算書参照)を免れ、
五 被告人炳城、同李は、共謀のうえ、被告会社日環住機の業務に関し、法人税を免れようと企て、売上の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿したうえ、
(一) 昭和五五年一一月一日から同五六年一〇月三一日までの事業年度における同被告会社の実際所得金額が三億四一五〇万〇二〇五円(別紙(一九)の1修正損益計算書参照)あったにもかかわらず、昭和五六年一二月二六日、前記渋谷税務署において、同税務署長に対し、所得金額が七一七六万二二五七円でこれに対する法人税額が二八三〇万九七〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(右同押号の5)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同被告会社の右事業年度における正規の法人税額一億四一五九万九七〇〇円と右申告税額との差額一億一三二九万〇〇〇〇円(別紙(二〇)の1税額計算書参照)を免れ、
(二) 昭和五六年一一月一日から同五七年一〇月三一日までの事業年度における同被告会社の実際所得金額が一億三九五〇万九六三五円(別紙(一九)の2修正損益計算書参照)あったにもかかわらず、昭和五七年一二月二四日、前記渋谷税務署において、同税務署長に対し、所得金額が六五五六万一四四五円でこれに対する法人税額が二六一〇万四四〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(右同押号の6)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、同被告会社の右事業年度における正規の法人税額五一六万二五〇〇円と右申告税額との差額三一〇五万八一〇〇円(別紙(二〇)の2税額計算書参照)を免れ、
たものである。
(証拠の標目)
以下「回」は公判期日を示す。なお「特(わ)第三八〇三号第一回」は特に昭和五九年特(わ)第三八〇三号事件の昭和六〇年一月八日の公判期日を表わす。
判示第一、第二の全事実につき
一 被告人猪口、同仁孝、同李(以上いずれも第六回)、同山口(第七、第八回)、同炳城(第七、第九回)の当公判廷における各供述
判示第一の事実につき
一 被告人炳城(昭和五九年二月二〇日付、同年五月一七日付、同年九月七日付、同年一〇月二五日付、同年一一月一日付、同月二二日付、同月二六日付、同年一二月四日付、同月一二日付、同月一六日付)、同山口(同年一一月一五日付、同月二一日付)、同猪口(同年一〇月二五日付、同年一一月一日付)、同仁孝(同年一〇月二五日付、同月三〇日付)、同李(同年一一月二〇日付、同月二一日付)の検察官に対する各供述調書
一 被告会社善本産業(六通)、共同商事、装美、被告会社日環アルミニウム工業(三通)、同栄進商事(二通)、同日環エクステリア(四通)、同日環住機設備(四通)、同日環(六通)、同日環アルミ建材(二通)、同日環住機(三通)の各登記簿謄本
判示第二の全事実につき
一 収税官吏作成の昭和六〇年一月三一日付、同年二月七日付各調査書
判示第二の一の(一)ないし(五)、二、三の各事実につき
一 被告人炳城の当公判廷における供述(第五回)
判示第二の冒頭の事実及び一の(一)ないし(五)の各事実につき
一 被告人山口の当公判廷における供述(第五回)
一 被告人炳城の検察官に対する昭和五九年一一月二六日付、同年一二月二日付各供述調書
一 被告人山口の検察官に対する昭和五九年一二月五日付、同月二一日付、同年一二月三日付、同月四日付各供述調書
一 三武正男(昭和五九年一二月二日付)、平沢宏(二通、同年一一月二一日付、同年一二月三日付)、安藤俊輔(同月二日付)、寺尾嘉剛、古田晴彦(同月四日付)の検察官に対する各供述調書
判示第二の一の(一)ないし(三)の各事実につき
一 三武正男の検察官に対する昭和五九年一二月二日付供述調書
判示第二の一の(一)の事実につき
一 被告人炳城の公判調書(第一回)中の供述部分(ただし、同被告人の関係のみで証拠となる。)
一 被告人炳城(昭和五九年二月二〇日付-ただし、同被告人の関係のみで証拠となる-、同年一一月二七日付)、同山口(同年二月一〇日付、同年一一月二三日付)の検察官に対する各供述調書
一 三武正男の検察官に対する昭和五九年二月一四日付供述調書
一 収税官吏作成の昭和五九年一月一七日付調査書六通
一 被告会社善本産業の登記簿謄本六通
一 押収してある被告会社善本産業の法人税確定申告書一袋(昭和五九年押第四七〇号の1)
判示第二の一の(二)の事実につき
一 被告人炳城の公判調書(第二回)中の供述部分(ただし、同被告人の関係のみで証拠となる。)
一 被告人炳城(昭和五九年五月一七日付-、ただし、同被告人の関係のみで証拠となる-、同年一一月二八日付)、同山口(同年五月一八日付-ただし、被告人炳城の関係のみで証拠となる-、同年一一月二四日付)、同李(同年五月一八日付)の検察官に対する各供述調書
一 三武正男(昭和五九年五月一四日付)、野田和宏(同月一五日付)、三平憲志(同月一八日付)の検察官に対する各供述調書
一 収税官吏作成の昭和五九年三月一九日付調査書六通
一 大蔵事務官作成の昭和五九年五月二三日付査察官報告書
一 目黒税務署長作成の昭和五九年四月六日付証明書
一 共同商事の登記簿謄本
一 押収してある共同商事の法人税確定申告書一袋(右同押号の2)
判示第二の一の(三)の各事実につき
一 被告人炳城の公判調書(第三回)中の供述部分(ただし、同被告人の関係のみで証拠となる。)
一 被告人炳城(昭和五九年九月七日付-ただし、同被告人の関係のみで証拠となる-、同年一一月二九日付)、同山口(同年九月八日付-ただし、被告人炳城の関係のみで証拠となる-、同年一一月二六日付五五枚綴りのもの)、同猪口(同年九月八日付)の検察官に対する各供述調書
一 三武正男(昭和五九年九月六日付)、野田和宏(同月七日付)、三平憲志(同年一二月三日付)の検察官に対する各供述調書
一 収税官吏作成の昭和五九年六月一四日付調査書二三通
一 大蔵事務官作成の昭和五九年九月一四日付査察官報告書
一 淀橋税務署長作成の昭和五九年六月一八日付証明書
一 装美の登記簿謄本
一 押収してある装美の法人税確定申告書二袋(右同押号の3、4)
判示第二の一の(四)、(五)の各事実につき
一 三武正男の検察官に対する昭和五九年一一月九日付、同年一二月一四日付各供述調書
判示第二の一の(四)の各事実につき
一 被告人炳城(昭和五九年一一月一日付)、同山口(同年一一月三〇日付)の検察官に対する各供述調書
一 北条勲、呉城正男こと呉正男(二通)、吉山こと全栄起、小野寺幸男、吉田朱美、伊能興介、蔭山圭介、山西文博、上田俊信、吉原拓夫、初川鶴夫、沖田久行、越智信治、守谷覚、蔵本久夫、切塚雄二郎、桐山幸典、目義雄、高橋薫、武信輝幸、大橋徹、松島弘継、秋田芳夫、石本昌平、相原英二、山本忠士、三武正男(昭和五九年一一月一日付、同月六日付、同月八日付、同月二七日付)、具志和子、斎藤宏平の検察官に対する各供述書
一 神野欣也作成の上申書
一 収税官吏作成の昭和五九年一一月一日付調査書七通
一 北税務署長作成の証明書二通
一 被告会社日環アルミニウム工業の登記簿謄本三通
一 押収してある被告会社日環アルミニウム工業の法人税確定申告書一袋(右同押号の8)
判示第二の一の(五)の各事実につき
一 被告人炳城(昭和五九年一一月二二日付)、同山口(同月二六日付三九枚綴りのもの)の検察官に対する各供述調書
一 野田和宏(昭和五九年一一月一七日付)、岩○博(二通)、横山勝、三武正男(同月二三日付)の検察官に対する各供述調書
一 収税官吏作成の昭和五九年一一月二日付調査書四通
一 被告会社栄進商事の登記簿謄本二通
一 押収してある被告会社栄進商事の法人税確定申告書一袋(右同押号の9)
判示第二の二、三の各事実につき
一 被告人炳城の公判調書(第四回)中の供述部分
一 被告人炳城の昭和五九年一〇月二五日付、同年一一月一日付、同月一三日付各供述調書
判示第二の各事実につき
一 被告人炳城の当公判廷における供述(第五回)
一 被告人猪口の公判調書(第四回)中の供述部分
一 被告人炳城(昭和五九年一一月九日付、同月一七日付)、同猪口(同年一〇月二五日付、同年一一月一日付、同月六日付、同月八日付、同月九日付二通、同月一三日付、同月一九日付)の検察官に対する各供述調書
一 新井徳治、石川光一郎、猪口多久真、大野常雄、金森公義、金山記康(二通)、唐鎌章広、木村光夫、島崎七男、下平将之、水野勝治、吉田十三三、和田和子、平沢宏の検察官に対する各供述調書
一 収税官吏の佐々木巧、山田益栄に対する各質問てん末書
一 収税官吏作成の次の各調査書(昭和五九年九月二〇日付のもの)
1 当期仕入高調査書
2 外注工賃調査書
3 給与手当調査書
4 雑収入調査書(記録五〇五と記載のあるもの)
5 事業税認定損調査書(記録五〇六と記載のあるもの)
一 被告会社エクステリア日環の登記簿謄本四通
一 押収してある被告会社エクステリア日環の法人税確定申告書二袋(右同押号の5、6)
判示第二の三の事実につき
一 被告人仁孝の当公判廷における供述(第五回)
一 被告人仁孝の公判調書(第四回)中の供述部分
一 被告人炳城(昭和五九年一一月一〇日付)、同仁孝(同年一〇月二五日付、同月三〇日付、同年一一月一日付、同月七日付)の検察官に対する各供述調書
一 米谷マリ子の検察官に対する供述調書
一 収税官吏作成の次の各調査書(昭和五九年九月二〇日付のもの)
1 当期材料仕入高調査書
2 雑収入調査書(記録第二一号と記載のあるもの)
3 事業税認定損調査書(記録第二二号と記載のあるもの)
一 被告会社日環住機設備の登記簿謄本四通
一 押収してある被告会社日環住機設備の法人税確定申告書一袋(右同押号の7)
判示第二の四の(一)、五の各事実につき
一 被告人炳城の検察官に対する昭和五九年一二月二一日付供述調書
判示第二の四の(一)、(二)の各事実につき
一 被告人炳城の当公判廷における供述(特(わ)第三八〇三号第一回)
判示第二の四の(一)の各事実につき
一 被告人炳城の昭和五九年一二月一六日付、同月一八日付各供述調書
一 芳野徹夫、江原信夫、佐々木洋、玉城光雄、石田修、佐々木重則、小林克典、高橋浅男、高見正雄、大野敏朗、法華修、志田義貴、山口敏行、西沢俊和、三平憲志(昭和五九年一二月一九日付)、三武正男(同月一七日付二通、同月一九日付)
一 収税官吏作成の昭和五九年一〇月三一日付調査書三一通
一 被告会社日環の登記簿謄本六通
一 押収してある被告会社日環の法人税確定申告書三袋(昭和六〇年押第一号の1ないし3)
判示第二の四の(二)の事実につき
一 被告人炳城の検察官に対する昭和五九年一二月四日付供述調書
一 岩田光明、岩室博明、中谷禎秀、森崎孝、広川清臣、木村義人、森本光春、末松雅紀、緒方一夫、三武正男(昭和五九年一二月二四日付)の検察官に対する各供述調書
一 収税官吏作成の昭和五九年一一月一日付調査書三通
一 被告会社日環アルミ建材の登記簿謄本二通
一 押収してある被告会社日環アルミ建材の法人税確定申告書一袋(右同押号の4)
判示第二の五の各事実につき
一 被告人李の当公判廷における各供述(特(わ)第三八〇三号第一回)
一 被告人炳城(昭和五九年一二月一二日付)、同李(同年一一月二〇日付、同月二一日付、同月二六日付、同年一二月一九日付)の検察官に対する各供述調書
一 坂田茂、中村忠男、阿部一郎、岩淵正義、中村省吾、坂東裕一、大館兼美、種子田享、川上勉、梅原哲夫、宮沢賢治、越前元成、樋口昭、川原田博美、吉野広治(二通)、塩崎照夫の検察官に対する各供述調書
一 収税官吏作成の昭和五九年一一月三〇日付調査書七通
一 被告会社日環住機の登記簿謄本三通
一 押収してある被告会社日環住機の法人税確定申告書二袋(右同押号の5、6)
(法令の適用)
一 罰条
(一) 被告会社善本産業
昭和五六年法律第五四号による改正前の法人税法一五九条一、二項、一六四条
(二) 被告会社日環アルミニウム工業、同栄進商事、同エクステリア日環、同日環住機設備、同日環、同日環アルミ建材、同日環住機
いずれも右改正後の法人税法一五九条一、二項、一六四条一項
(三) 被告人炳城、同山口、同猪口、同仁孝、同李
被告人炳城、同山口の判示第二の一の(一)の所為(以下「一の(一)の所為」というように表示する。)につき、行為時において右改正前の法人税法一五九条一項、刑法六〇条(被告人山口については更に刑法六五条。同被告人については以下同様である。)裁判時において右改正後の法人税法一五九条一項、刑法六〇条(刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑による。)
被告人炳城、同山口の判示一の(二)ないし(五)の各所為、被告人炳城、同猪口の判示二の各所為、被告人炳城、同仁孝の判示三の所為、被告人炳城、同李の判示五の各所為につき、いずれも右改正後の法人税法一五九条一項(被告人炳城の判示一の(二)、(三)の各所為については更に同条二項)、刑法六〇条
被告人炳城の判示四の各所為につき、右改正後の法人税法一五九条一項
二 刑種の選択等
(一) 被告人炳城の判示一の(二)、(三)の罪の刑については、いずれも懲役刑及び罰金刑併科、同被告人のその余の罪の刑については、いずれも懲役刑選択
(二) 被告人山口、同猪口、同仁孝、同李につき、いずれも懲役刑選択
三 併合罪の処理
(一) 被告会社日環アルミニウム工業、同エクステリア日環、同日環、同日環住機
刑法四五条前段、四八条二項
(二) 被告人炳城
刑法四五条前段、懲役刑につき同法四七条本文、一〇条(刑及び犯情の最も重い判示一の(三)の1の罪の刑に加重)、罰金刑につき同法四八条二項
(三) 被告人山口、同猪口、同李
刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(被告人山口については判示一の(三)の1の罪の刑に、同猪口については判示二の(二)の罪の刑に、同李については判示五の(一)の罪の刑にそれぞれ加重)
四 未決勾留日数の算入
被告人炳城、同山口につき、各刑法二一条
五 労役場留置
被告人炳城につき刑法一八条
六 刑の執行猶予
被告人猪口、同仁孝、同李につき、各刑法二五条一項
(量刑の理由)
本件は、いわゆる日環グループに属する十数社を統括しこれを支配していた被告人炳城が、巨額の営業利益があがるようになったことから、資金を蓄積する目的で脱税を企画し、顧問税理士の被告人山口や側近の被告人猪口、同仁孝、同李らと相謀り、被告人山口から脱税の手口について教示を受けながら、脱税を敢行し、判示のとおり、昭和五五年から同五八年までの間、一〇法人一六事業年度分で総額一三億九八〇〇万円余の法人税を免れたというものであって、脱税額は巨額であり、我が国における同種事件の中でも屈指の超大型脱税事犯である。各脱税額の実際税額に対する割合(ほ脱率)も総平均七四パーセントに昇る高率であり、加えて、公正な立場から納税義務の適正な実現を図るべき税理士が犯行に加担していたことから、税理士業界はもとより、社会一般に及ぼした影響も甚大であって、悪質かつ重大な事犯といわなければならない。
具体的な脱税の手段、方法等をみても、個々の会社においては、判示のとおり、売上除外、棚卸除外、架空賞与の計上、架空仕入の計上、架空外注費の計上等多岐にわたる事前の不正行為を行っているのみならず、売上高が一〇億円を超え多額になると税務調査が厳しくなることから、これを避け脱税の事実が発覚しないようにするため、法人の営業所を分離独立させ、新たな法人とすることにより個々の会社における売上高を少なくしたり、また万一特定の法人について脱税が発覚しても、その調査が他の法人に及ばないようにするため、卸会社・販売施工会社を二つの系列に分けるなどの工作を行い、更には右の目的で設立した卸会社の共同商事及び装美の昭和五七年一一月期分について、判示のとおり多額の利益が生じているにもかかわらず、これを全く無視した零申告ないし赤字申告をしたうえ、これらの事実が露見することを避けるため、新会社を設立して従前の事業を引継がせるとともに、右両会社については順次解散して消滅させるなどの挙にでているものであって、これらはいずれも大胆かつ徹底した脱税工作というべきである。加えて昭和五七年一〇月、被告会社日環アルミニウム工業に税務調査が入り、従業員に対する架空賞与の計上や売上の繰延計上等の処理が問題となったが、架空賞与については支給時期が対象期外であると指摘されたのみで架空の事実については発覚しなかったことから、その後も多額の架空賞与の計上等を行って脱税を重ねていたものである。しかも被告人らは、右架空賞与の計上につき、本件で逮捕されるまで、あくまでこれを実際に支給したと主張しつづけたばかりか、査察調査に対する想定問答集を作成して、関係従業員に配布し、質問調査の際には実際に支給を受けた旨口裏を合わせるように働きかけたり、受給名義人宛に支給した賞与を会社において預っている旨記載した預り証やこれをいつでも名義人に返還する旨記載した通知書を作成して交付するなど積極的に罪証隠滅を図っていたものである。以上のような事情を考えると、本件は、納税者は誠実な申告者であることを前提とする申告納税制度を無視すること甚しく、これを根底から破壊する重大な犯行というべきものであって、これに対する被告人らの責任は厳しく追及されてしかるべきである。
そこで被告人らの個別の犯情をみると、被告人炳城は、日環グループの最高総括者として君臨していたものであり、被告人山口の助言に従い、脱税工作の一環として前記のような会社の二系列化や企業の分割を実施したほか、本件各会社の各事業年度の脱税額をそのつど自ら決定し、被告人山口と具体的な脱税工作を相談し、同被告人の考案にかかる脱税の具体的方法を共に選定実施していたものであり、本件犯行の全般を通じて終始犯行を自ら計画し、主導的にこれを遂行していたものである。被告人炳城は、本件脱税の動機に関し、経営基盤の不安定な日環グループ各社の資金を蓄え、将来の不況や事業拡大に備えるために本件犯行に及んだ旨供述しているが、脱税による資金の蓄積が不当であることは多言を要しないのみならず、もともと日環グループ各社はいずれも被告人炳城のワンマン経営にかかる個人会社であって、本件脱税により蓄積された簿外資金の大部分も同被告人個人名義の債権や仮名・無記名預金等として管理され、しかもその一部については同被告人が自己の個人貸付の資金にまわして多額の利息収入を得ていたものであり、本件脱税により蓄積された資金は、主として同被告人によって利用されていたものと認められる。また被告人炳城は、前記のとおり、架空賞与について、被告人山口をかばうためであったとはいえ、捜査段階において、逮捕されるまで実際に支給した旨主張しつづけていたのみならず、自ら関係従業員に対し前記預り証や通知書を交付し、同被告人の主張に口裏を合わせるよう指示するなどして積極的に罪証隠滅を図っていたものである。以上のほか、被告人炳城は、同山口が本件脱税に関与するようになる数年前からすでに現金売上の一部について脱税を行っていたこと、被告人炳城には詐欺罪により懲役刑(執行猶予)に処せられた前科があること等を考えると、同被告人の責任は最も重くかつ重大であることは明らかである。
次に被告人山口は、税理士であって税務に関する専門家として公正な立場において納税申告等に関与すべき社会的使命を有しながら、自己の利益のためにこれを放擲し、被告人炳城からの脱税の相談を受け入れ、本件脱税に関与するに至ったものであるが、ことに被告人山口が本件に関与するようになって以来、日環グループの脱税の方法が多岐にわたりかつ大規模となっていることを考えると、税理士たる同被告人の関与が被告人炳城をして安易に本件犯行に駆りたてる結果になったとも評価し得るのであり、したがって被告人山口は、本件において被告人炳城に次いで重要な役割を果していたものといわざるを得ない。被告人山口は、昭和五四年春ころ、被告人炳城から脱税の方法について相談を受けるや、税理士としての経験と知識を悪用し、脱税が発覚しにくい体制造りとして、前記企業の分割案や日環グループの二系列化案を進言し、その後数年間にわたって被告人炳城の要求に応じて具体的な脱税の方法を案出し、これを実行していたものであって、特に共同商事及び装美について、被告人炳城と相謀り、被告人山口において自ら実際額を無視し全く根拠のない会計数字を並べた前記架空の零申告ないし赤字申告書を作成し、多額の脱税結果を招来させているものであるが(さすがに右申告書に関与税理士として署名はしなかったものである。)、右は税理士としての最低の倫理にも悖る行為であり厳しく非難されて然るべきものといわなけれはならない。また被告人山口は架空賞与の質問調査に備え、前記想定問答集を作成して従業員に虚偽の供述をさせるなど罪証隠滅工作にも積極的に関与していたものである。以上のほか、被告人山口は、同炳城から本件脱税に加担したことにより、通常の顧問料及び決算料をはるかにこえる金額を受領していたばかりでなく、被告人炳城に対し、東京同和会に支払う脱税工作のための費用と称して申告ごとに四〇〇万円あるいは三〇〇万円を支払わせ、そのうち二〇〇万円を自己のものとして取得していたものであり、その金額が総額六〇〇〇万円にものぼること、自己の所得についても相当期間不正申告をしていたこと等をも併せると、被告人山口の責任もまた重大であるといわざるを得ない。
また被告人猪口、同仁孝、同李は、いずれも被告人炳城の具体的な指示のもとに判示各犯行に加担していたものであるが、判示のとおり各被告会社の代表取締役として、それぞれ最高責任者の立場にありながら、被告人炳城の脱税計画を安易に受け入れ、本件各犯行を敢行したものであって、各関係被告会社の脱税額が多額であること等を考えると、その責任には軽視しえないものがある。
右に述べたような本件犯行の規模、罪質、態様、犯行後の罪証隠滅工作等の事実を総合勘案すれば、被告人らはいずれも本件の捜査及び当公判廷において本件各犯行をすべて認め、今後再び脱税の犯行を繰り返えさない旨誓約していること、本件起訴にかかる事業年度の法人税を含む日環グループの不正申告に関し、すべて修正申告をし、すでに納付額の確定した国税及び地方税について総額約三八億七〇〇〇万円を納付し、未納分の地方税についても納付額が確定次第完納することを確約していること、被告人炳城及び同山口は自己の所得の不正申告分についても自発的に修正申告をし、国税及び地方税をともに完納していること、日環グループ各社においては、新たにしかるべき税理士をむかえ、従前の経理体制を改善する方向にあること、被告人らは本件が新聞等により報道されたことからすでに相応の社会的制裁を受けているものと認められること、被告人炳城、同山口、同猪口、同仁孝は本件により相当期間勾留されたこと、被告人山口は所属税理士会をすでに脱退し、税理士業務から一切手を引いていること、被告人山口、同猪口、同仁孝、同李については特段の前科、前歴がないこと、その他被告人らの家庭の状況等被告人らに有利な情状を最大限に考慮しても、被告人炳城及び同山口について主文掲記の実刑を免れないものであり(なお被告人炳城については、前叙のとおり共同商事及び装美が消滅し、両法人に対し罰金を課すことが不可能であるから、右両法人に関する脱税につき罰金刑を併科することとした)、またその余の被告人ら及び各被告会社についても、主文掲記の刑はやむをえないところである。
(求刑被告会社善本産業につき罰金六〇〇〇万円、同日環アルミニウム工業につき罰金二七〇〇万円、同栄進商事につき罰金一五〇〇万円、同エクステリア日環につき罰金三五〇〇万円、同日環住機設備につき罰金一六〇〇万円、同日環につき四五〇〇万円、同日環アルミ建材につき一一〇〇万円、同日環住機につき罰金四四〇〇万円、被告人炳城につき懲役三年六月及び罰金一億八〇〇〇万円、同山口につき懲役一年六月、同猪口、同仁孝、同李につき各懲役八月)
よって主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 小泉祐康 裁判官 羽淵清司 裁判官 石山容示)
別紙(一) 修正損益計算書
善本産業株式会社
自昭和55年1月1日
至昭和55年12月31日
<省略>
別紙(二) 税額計算書(単位 円)
会社名 善本産業株式会社
自 昭和55年1月1日
至 昭和55年12月31日
<省略>
別紙(三) 修正損益計算書
共同商事株式会社
自 昭和55年6月23日
至 昭和56年5月31日
<省略>
別紙(四) 税額計算書(単位 円)
会社名 共同商事株式会社
自 昭和55年6月23日
至 昭和56年5月31日
<省略>
別紙(五)の1 修正損益計算書
株式会社 装美
自昭和56年4月17日
至昭和56年11月30日
<省略>
別紙(五)の2 修正損益計算書
株式会社 装美
自昭和56年12月1日
至昭和57年11月30日
<省略>
別紙(六)の1 税額計算書(単位 円)
会社名 株式会社 装美
自 昭和56年4月17日
至 昭和56年11月30日
<省略>
別紙(六)の2 税額計算書(単位 円)
会社名 株式会社 装美
自 昭和56年12月1日
至 昭和57年11月30日
<省略>
別紙(七)の1 修正損益計算書
日環アルミニウム工業株式会社
自昭和56年3月1日
至昭和57年2月28日
<省略>
別紙(七)の2 修正損益計算書
日環アルミニウム工業株式会社
自昭和57年3月1日
至昭和58年2月28日
<省略>
別紙(八)の1 税額計算書(単位 円)
会社名 日環アルミニウム工業株式会社
自 昭和56年3月1日
至 昭和57年2月28日
<省略>
別紙(八)の2 税額計算書(単位 円)
会社名 日環アルミニウム工業株式会社
自 昭和57年3月1日
至 昭和58年2月28日
<省略>
別紙(九) 修正損益計算書
栄進商事株式会社
自昭和57年4月28日
至昭和58年3月31日
<省略>
別紙(一〇) 税額計算書(単位 円)
会社名 栄進商事株式会社
自 昭和57年4月28日
至 昭和58年3月31日
<省略>
別紙(一一)の1 修正損益計算書
株式会社 エクステリア日環
自昭和55年9月1日
至昭和56年8月31日
<省略>
別紙(一一)の2 修正損益計算書
株式会社 エクステリア日環
自昭和56年9月1日
至昭和57年8月31日
<省略>
別紙(一二)の1 税額計算書(単位 円)
会社名 株式会社エクステリア日環
自 昭和55年9月1日
至 昭和56年8月31日
<省略>
別紙(一二)の2 税額計算書(単位 円)
会社名 株式会社エクステリア日環
自 昭和56年9月1日
至 昭和57年8月31日
<省略>
別紙(一三) 修正損益計算書
日環住機設備株式会社
自昭和56年1月1日
至昭和56年12月31日
<省略>
別紙(一四) 税額計算書(単位 円)
会社名 日環住機設備株式会社
自 昭和56年1月1日
至 昭和56年12月31日
<省略>
別紙(一五)の1 修正損益計算書
株式会社 日環
自昭和55年7月1日
至昭和56年6月30日
<省略>
別紙(一五)の2 修正損益計算書
株式会社 日環
自昭和56年7月1日
至昭和57年6月30日
<省略>
別紙(一五)の3 修正損益計算書
株式会社 日環
自昭和57年7月1日
至昭和58年6月30日
<省略>
別紙(一六)の1 税額計算書(単位 円)
会社名 株式会社 日環
自 昭和55年7月1日
至 昭和56年6月30日
<省略>
別紙(一六)の2 税額計算書(単位 円)
会社名 株式会社 日環
自 昭和56年7月1日
至 昭和57年6月30日
<省略>
別紙(一六)の3 税額計算書(単位 円)
会社名 株式会社 日環
自 昭和57年7月1日
至 昭和58年6月30日
<省略>
別紙(一七) 修正損益計算書
日環アルミ建材株式会社
自昭和56年5月1日
至昭和57年4月30日
<省略>
別紙(一八) 税額計算書(単位 円)
会社名 日環アルミ建材株式会社
自 昭和56年5月1日
至 昭和57年4月30日
<省略>
別紙(一九)の1 修正損益計算書
日環住機株式会社
自昭和55年11月1日
至昭和56年10月31日
<省略>
別紙(一九)の2 修正損益計算書
日環住機株式会社
自昭和56年11月1日
至昭和57年10月31日
<省略>
別紙(二〇)の1 税額計算書(単位 円)
会社名 日環住機株式会社
自 昭和55年11月1日
至 昭和56年10月31日
<省略>
別紙(二〇)の2 税額計算書(単位 円)
会社名 日環住機株式会社
自 昭和56年11月1日
至 昭和57年10月31日
<省略>